「大企業の看板」を捨てるのが怖いあなたへ。自己肯定感を会社から切り離す「静かな失敗」のすすめ

副業

はじめに:「見えない盾」を手放す恐怖の正体

「今の会社を辞めて、自分の力で挑戦してみたい」
「いつかは独立して、自由な働き方を手に入れたい」

心のどこかでそう思いつつも、いざ具体的な行動を起こそうとすると、急に足がすくんで動けなくなってしまう……。そんなふうに悩んでいませんか?

結論から言います。あなたが新しい一歩を踏み出せないのは、決して「勇気がないから」でも「能力が足りないから」でもありません。

その原因は、あなたが現在持っている「大企業」や「正社員」というステータス、つまり「見えない盾(看板)」を失うことへの強烈な恐怖にあります。

かつて大手メーカーに勤めていた私自身、優秀な同僚たちがこの「ステータスを手放す恐怖」に縛られ、会社へのモヤモヤを抱えながらも身動きが取れなくなっている姿を数え切れないほど見てきました。「大企業の看板」は、想像以上に強力な守りです。私たちが無意識のうちに手放すことを恐れている「見えない盾」の正体を、具体的に分解してみましょう。

大企業の「見えない盾」の正体失ったときに感じる恐怖(心理的なハードル)
安定した継続収入毎月決まった日に振り込まれる給与が途絶える不安
強固な社会的信用住宅ローンやカードの審査など「社会のパスポート」を失う不安
所属の欲求とプライド「〇〇会社の自分」という肩書き=自己肯定感の喪失
整った福利厚生と環境守られたルールの外側(完全な自己責任の世界)へ出る恐怖

いかがでしょうか。これだけ強力な盾に守られていれば、それを自ら手放すのが怖いのは、人間としてごく自然な感情です。

心理学や行動経済学の世界でも、人は「新しい何かを得ること」よりも「今持っているものを失うこと」を過剰に恐れる心理傾向があることが証明されています(参考:現状維持バイアス – Wikipedia)。あなたが動けないのは、正常な防衛本能が働いている証拠なのです。

しかし、私が勤めていた大手企業がリーマンショックの影響で倒産したように、「大企業にいれば一生安泰」という価値観は、ある日突然、理不尽な外部要因によって崩れ去るリスクを孕んでいます。一番危険なのは、会社の看板(見えない盾)に、自分の「自己肯定感」まで依存させてしまうことです。盾がなくなった瞬間、自分の足で立てなくなってしまうからです。

では、この強烈な恐怖をどうやって乗り越え、自己肯定感を会社から切り離せばいいのでしょうか?
決して順風満帆なエリート街道を歩んできたわけではない私が、泥臭い実体験から見つけた「心理的な壁の乗り越え方」をお話しします。キーワードは、会社の外で誰にも知られずに行う「静かな失敗」です。

なぜ大企業にいると挑戦が怖くなるのか?

大企業の「見えない盾」を手放せない理由は、待遇面だけではありません。
実は、大企業で働く人々の「これまでの歩み(経歴)」と、組織に深く根付く「評価の仕組み」そのものが、挑戦への恐怖を無意識のうちに増幅させているのです。

エリートを縛る「綺麗な経歴」という呪縛

少し私の過去の話をさせてください。
プロフィール記事でも触れましたが、私は子どもの頃から決して勉強ができたわけではありません。進学先も工業高校しかなく、その後のキャリアも含めて、決して「順風満帆」と呼べるようなものではありませんでした。

しかし、大手企業に入社して周りを見渡したとき、同僚たちの「経歴の綺麗さ」に驚かされました。
高校受験、大学受験、そして過酷な就職活動。彼らの多くは、人生の重要な分岐点をすべて上手にこなし、競争を勝ち抜いてきたエリートたちばかりだったのです。しかし皮肉なことに、この「綺麗な経歴」こそが、新しい挑戦を邪魔する呪縛になります。

これまで大きな挫折を経験せず、社会が用意したレールの上を上手に走ってきた人ほど、「レールから外れること」や「思い通りにいかない(失敗する)こと」に対する恐怖が人一倍強くなってしまうのです。

  • 泥臭い経歴の持ち主(私など):「まあ、うまくいかなくても死ぬわけじゃない。どうにかなるか」と、とりあえず試すことができる。
  • 綺麗な経歴のエリート層:「失敗したら積み上げてきたものが崩れる。周りからどう思われるか怖い」と石橋を叩いても渡れなくなってしまう。

「失敗して、みっともない姿を周りに見られるのが恥ずかしい」
優秀な人ほど、無意識のうちに高くなってしまった自分のプライドや、周囲からの期待がプレッシャーとなり、新しい一歩を踏み出すことを躊躇させてしまいます。

組織特有の「減点方式」が失敗への恐怖を増幅させる

さらに追い打ちをかけるのが、大企業という「組織の仕組み」です。
会社での仕事の多くは、一部の営業部門などを除けば、既存のビジネスや組織を「滞りなく安定して運営すること」に重きが置かれています。そのため、評価制度や職場の雰囲気はどうしても「減点方式」になりがちです。

減点方式の環境下では、新しいことに挑戦して失敗することは「リスク」でしかありません。毎日「失敗しないこと」「ミスなく完璧にこなすこと」を求められ続けていれば、いつの間にか「失敗=絶対にしてはいけない悪いこと」という強力なマインドブロックがかかってしまいます。

つまり、あなたが挑戦を恐れるのは勇気がないからではなく、「綺麗な経歴を守りたい心理」と「減点方式の組織文化」に長く浸かりすぎたことで、失敗を過剰に恐れる体質になってしまっているだけなのです。

自己肯定感を会社から切り離す2つのステップ

このガチガチに固まってしまった「失敗への恐怖」を解きほぐすには、いきなり会社を辞めたり、起業したりする必要はありません。必要なのは、減点方式の世界に慣れきってしまった心をほぐすための「失敗のリハビリ」です。
自己肯定感を会社の看板から切り離し、自分の足で立てるようになるための2つのステップをご紹介します。

ステップ1:会社と離れた場所で、誰にも知られずに失敗する

最初のステップは、「会社の外で、誰にも知られずに静かに失敗すること」です。
いきなり他人の目があるところで挑戦するのはハードルが高すぎます。まずは「失敗しても誰にもバレない安全地帯」で、自分の現在地を知ることから始めましょう。一番おすすめなのは、自分の興味がある分野の「資格勉強」などです。

ここで、私自身の恥ずかしい実体験をお話しします。
私の場合、それは転職を見据えた「英語(TOEIC)」への挑戦でした。もともと英語に全く興味がなく、社会人1年目に受けたTOEICのスコアは「315点」でした。大卒の社会人としては、とてつもなく英語ができないレベルです。

しかし、私はこれを「誰にも言わずに」黙々と勉強し始めました。一人で単語帳を開き、模試を解いては間違え、本番の試験を受けては目標点に届かず……という「小さな失敗」を何度も何度も繰り返しました。

会社での失敗(減点方式)誰にも言わない挑戦での失敗
上司や同僚に知られ、評価が下がる自分以外、誰も失敗したことを知らない
「ミスをした」という履歴が残る「経験値」として自分の中にだけ蓄積される
恥ずかしくて落ち込み、引きずるこっそりやり直せばノーダメージ

結果的に、試行錯誤を繰り返す中でスコアは徐々に上がり、転職時には履歴書に堂々と書ける「600点」に到達しました。
ここで重要なのは点数が上がったことではなく、「自分で目標を決め、会社の外でこっそり失敗を繰り返し、少しずつ前進した」という事実が、会社の看板とは無関係の「小さな自己肯定感」を育ててくれたということです。

ステップ2:会社の看板が通用しないコミュニティで「ビリ」になる

一人での挑戦に慣れてきたら、次のステップです。
それは、「会社とは全く関係のないコミュニティに参加し、あえてみっともない姿を晒すこと」です。

私の場合は、スポーツジムの「水泳クラブ」と、自転車の「サイクルクラブ」への参加でした。こういったスポーツのコミュニティには「どれだけ速く泳げるか」「どれだけ速くペダルを漕げるか」というシビアな比較基準があります。大企業の看板や役職は、水着やサイクルジャージに着替えた瞬間に一切通用しなくなります。

そんな完全なアウェイ環境に飛び込んだ私の結果はどうだったか?
どちらのクラブでも、見事なまでに万年「最後の方(ビリ)」でした。

周りがスイスイと進む中、私は息を切らして最後尾をついていくだけ。「大企業のエンジニア」としてのプライドなど粉々に砕け散る、みっともない姿です。最初のうちは「恥ずかしい」と落ち込みました。しかし、毎週のようにビリになり続けていると、ある衝撃的な事実に気がつきます。

「周りの人は誰も、私がビリであることなんて気にしていない」

みんな自分のタイムを縮めることに夢中で、ビリで喘いでいる私のおじさんのことなど、誰も見ていませんし、笑いもしませんでした。一番自分の失敗を気にし、恥ずかしがって過剰に反応していたのは、他でもない「自分自身」だったのです。

誰もあなたの失敗など気にしていないという真実

水泳や自転車で万年ビリを経験して得た最大の収穫。それは、「他人は自分が思っているほど、自分のことを見ていない」という冷酷で、そして最高に自由な真実です。

心理学の世界では、自分が常に他者からの注目を集めていると思い込んでしまう心理傾向を「スポットライト効果」と呼びます(参考:スポットライト効果 – Wikipedia)。大企業という「評価のムラ社会」に長くいると、私たちは無意識のうちにこの錯覚に陥ってしまいます。

しかし、一歩会社の外に出れば、そんなスポットライトは存在しません。みんな自分の人生を生きることで精一杯で、赤の他人の挑戦や失敗をいちいち監視し、嘲笑している暇など誰にもないのです。

もしあなたが新しい副業を始めて、全く稼げずにひっそりと店じまいをしたとしても、誰も指をさして笑いません。「みっともない姿を見せたくない」とあなたが怯えていたものの正体は、高すぎる自意識が作り出した「幻の観客」に対する見栄でしかなかったのです。

「誰も自分のことなど気にしていない」

この事実は、「会社を辞めたい」「新しいことに挑戦したい」と葛藤しているあなたにとって、これ以上なく背中を押してくれる最強の免罪符になります。他人の目という呪縛から解放されたとき、私たちは初めて「自分がどう生きたいか」という純粋な基準で動けるようになります。

まとめ:副業も独立も「言わなければ失敗ではない」

会社の外で「静かな失敗」を繰り返し、アウェイな環境でみっともない姿を晒すことで得られる「他人は気にしていない」という気づき。
これこそが、会社員が副業を始め、ゆくゆくは独立へとステップアップするための「最強の武器」になります。

なぜなら、ビジネスにおける挑戦も、周りに「言わなければ失敗ではない」からです。

新しいことを始めるとき、つい周りに「副業で稼ぐ!」「起業する!」と宣言したくなりますが、それは自らスポットライトを浴びに行くようなものです。そうではなく、会社員という「見えない盾」を持ったまま、こっそりと挑戦すればいいのです。

  • 週末にこっそりブログを立ち上げてみる
  • 不用品をフリマアプリで売って、小さな商売の感覚を掴んでみる
  • 小さくマイクロ法人を作って、事業を回してみる

もしこれらが全くうまくいかず、途中で投げ出してしまったとしても、翌日は平気な顔をして会社に出社すればいいだけです。会社員という安定した給与(命綱)があるうちは、何度でも、ノーダメージで「静かな失敗」を繰り返すことができます。

就職氷河期世代として社会に出た私たちは、「大企業にいれば一生安泰」という常識が崩れ去る瞬間を何度も目撃してきました。だからこそ、自分の人生の生殺与奪の権を、会社という「見えない盾」に預けっぱなしにするのはあまりにも危険です。

「大企業の看板」を捨てるのが怖いのは、あなたが自己肯定感を「会社のステータス」に依存させてしまっているからです。

まずは今日から、ほんの小さなことで構いません。会社の外で、誰にも知られずに新しい挑戦をし、そして静かに失敗してみてください。「失敗しても、世界は終わらないし、自分は自分のままだ」。そう心から思えるようになったとき、あなたの自己肯定感は会社の看板から切り離され、本当の意味で「自分の人生の主導権」を取り戻すことができるはずです。

あなたの密やかな、そして偉大な「静かな失敗」を心から応援しています。

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