会社に「自己実現」を求めるのは危険。就活の嘘から抜け出し、人生の主導権を取り戻す方法

哲学

会社に「やりがい」を求めると苦しくなる残酷な理由

毎日のお仕事、本当にお疲れ様です。
目の前の業務に追われながら、ふと「自分はこのままでいいのだろうか」「この仕事にやりがいはあるのか」と立ち止まってしまうことはありませんか?真面目で責任感の強い方ほど、こうした悩みを抱えやすいものです。

前回の記事で、会社には「労働力」だけを提供すればよく、「忠誠心」という過剰なコスト(隠れ手数料)まで支払う必要はない、というお話をしました。

今回はその続きです。
結論から言うと、「会社を、自分のやりたい事(自己実現)の場にしなくても良い」というお話をします。

「組織の論理」と「個人の希望」はすれ違うもの

なぜ、会社に自己実現を求めると苦しい立場に追い込まれてしまうのでしょうか。それは、複雑化した現代社会において、「会社から給料をもらうこと」と「自分のやりたいことを100%実現すること」を、同時に成り立たせるのは至難の業だからです。

以下の表を見てみてください。会社(組織)が求めているものと、あなた(個人)が求めているものは、そもそも根本的に異なっています。

項目会社(組織)の論理あなた(個人)の希望
最優先の目的利益の最大化・組織の存続個人の成長・やりがいの追求
配属・ポジション組織全体の最適化(都合)で決まる自分の得意なこと・やりたいこと
将来の保証業績や方針転換でいつでも覆る努力すればいつか報われる(と思いたい)

会社はあくまで「組織のため」に動いています。そのため、あなた個人の思い通りの業務を与えてくれるわけでも、希望するポジションに就かせてくれるわけでもありません。ましてや「将来必ずそのポジションに就かせる」という保証など、どこにもないのです。

「今は希望の部署じゃなくても、いつかきっと……」
そうやって、実現するかどうかも分からない不確実な期待を会社に抱き続け、何年も、あるいは何十年も勤め上げた結果、それが叶わなかった時の徒労感は計り知れません。それは、自分の人生の主導権を、会社に丸投げしてしまっている状態なのです。

【アクションプラン】「自己実現」のハードルを下げてみよう

私たちが苦しくなる原因の一つは、「やりたい事=社会的に意義のある立派なこと」と思い込んでいる点にあります。自己実現とは、会社に大きな利益をもたらしたり、社会課題を解決したりすることだけではありません。「一見何の役にも立たない、個人的な没頭」で全く問題ないのです。

  • 頼まれてもいないのに、エクセルで無駄に美しいマクロを組んでしまう
  • 他人のミスを見ると、気合で直すのではなく「仕組み」で解決したくなる
  • ゲームの攻略本を読むように、複雑なルールの裏道を探すのが好き

会社が用意した「立派なやりがい」ではなく、こうした「誰に言われるでもなく、息を吸うようにやってしまうこと」にこそ、あなた本来のやりたい事が隠れています。

就職活動で語った「大志」は、本当にあなたの夢か?

私たちが会社に対して、無意識のうちに「立派なやりがい」や「自己実現」を求めてしまう呪縛。そもそも、この呪縛はいつ、どこから始まったのでしょうか。

その大きな原因の一つは、「就職活動」にあると私は考えています。

新卒の就活でも、転職活動でも、面接の場では必ずこう問われます。
「あなたの志望動機は何ですか?」「この会社で何を成し遂げたいですか?」

その問いに対して、私たちは内定を獲得するために「社会的に正解とされる大志」を語ってきました。

  • 「御社の技術力で、社会課題を解決したい」
  • 「グローバルに外貨を稼ぎ、日本のモノづくりに還元したい」
  • 「お客様の笑顔のために、最高のサービスを提供したい」

面接官の耳に心地よく響くこれらの言葉ですが、胸に手を当てて振り返ってみてください。それは本当に、あなたが心の底からやりたかった事でしょうか?

「就活用の回答」と「本音」の残酷なズレ

社会人になる前夜まで、そんな大志を抱いた行動など一切していなかったのに、面接の部屋に入った瞬間に、急にそれが「自分の夢」になる。冷静に考えれば、非常に不自然なことです。

以下の表で、私たちが面接で語ってきた「建前」と、心の奥底にある「本音」を比べてみましょう。

状況語っていた「大志(建前)」隠れていた「本音」
会社選び社会課題の解決に貢献したい!安定した給料と、十分な休みが欲しい
職種選びチームを牽引するリーダーになりたい!なるべく怒られず、自分のペースで働きたい
将来の夢御社の事業を世界に広げたい!早く資産を貯めてリタイアしたい

誤解しないでいただきたいのですが、就職活動という「ゲームのルール」をクリアするために、建前を用意すること自体は何も悪くありません。それは社会を生き抜くための立派な生存戦略です。

「取り繕った仮面」が、今のあなたを苦しめている

本当に恐ろしいのは、その「就活用に取り繕った仮面」がいつの間にか顔に張り付き、自分自身の視野を狭めてしまうことです。

「社会の役に立つ立派な仕事をしなければならない」
「会社の中で成長し、自己実現を果たさなければならない」

就活用の回答だったはずの架空の「大志」を、自分へのノルマにしてしまう。だからこそ、日々の泥臭く単調な業務に対して、「こんなはずじゃなかった」「自分は社会に何の価値も生み出していないのではないか」と、強い虚しさと徒労感に襲われてしまうのです。

【アクションプラン】過去の「志望動機」を笑い飛ばそう

あなたが就職活動の時に語った志望動機は、あくまで「会社(組織)という箱に入るための通行手形」に過ぎません。
今週末、少しだけ時間を取って、「自分が就活の時に語っていた嘘(大志)」を思い出し、紙やスマホのメモに書き出してみてください。

「いやいや、社会貢献なんて本気で思ってなかったよね」と、過去の自分の必死な建前を客観的に笑い飛ばせたら大成功です。「立派な志望動機」という重い鎧を脱ぎ捨てることで、ようやく素の自分に向き合う準備が整います。

「本当にやりたい事」は、すでに無意識にやっている

就職活動という名の「建前」を捨て去ったとき、手元に残る本当の自分。では、私たちが「本当にやりたい事」とは一体何なのでしょうか。

答えは意外なほど身近にあります。
それは、立派な自己啓発本の中や、やりがいのある新規事業の中にあるのではありません。社会人になるずっと前から、誰に言われるでもなく、自分でも気づかないうちに「息を吸うようにやってしまっていること」の中にあるのです。

ゲームの「攻略本」が教えてくれた私の本質

少しだけ、私の個人的な話をさせてください。

私が子どもの頃から無意識に熱中していたのは、「ゲームの攻略本を隅々まで熟読し、それを実際のプレイで完璧に実践すること」でした。隠しアイテムの場所、効率的なレベル上げの方法、ボスの弱点……。複雑なシステムを読み解き、自分なりに最適化してクリアしていく過程が、たまらなく好きだったのです。

当然ですが、こんな趣味は就職活動の面接では一ミリも役に立ちません。「私の夢は、社会というゲームの攻略本を読み解くことです!」なんて言ってもお祈りメールが届くだけですから、当時はもっともらしい「大志」を語って社会人になりました。

しかし、大人になり、様々な組織の不条理を経験した今、私が結局何をやっているかというと……実は、子どもの頃からやっている本質は何も変わっていません。

以下の表を見てください。対象が変わっただけで、私の中の「やりたい事」の構造は全く同じなのです。

項目子どもの頃(テレビゲーム)現在(現実の社会)
プレイするゲームRPGやシミュレーションゲーム資本主義社会というリアルなゲーム
読み解く「ルール」魔法の属性、レベル上げの効率税制、社会保障、会社法の仕組み
実践する「攻略法」最短ルートでのボス討伐マイクロ法人の活用、税金や社会保険料の最適化
得られる「報酬」エンディング、達成感経済的自立、人生の主導権、自由な時間

私が今、こうしてブログで資本主義のハックについて発信し続けているのも、誰かに強制されたわけではありません。現実世界という理不尽で複雑なゲームの「攻略本」を読み解き、実践するのが好きでたまらないからです。

「役に立たない没頭」にこそ価値がある

「やりたい事」というのは、最初から社会の役に立つ立派な形をしているとは限りません。むしろ、最初は「ゲームが好き」「計算が好き」「人のアラ探しをするのが好き」といった、一見すると何の役にも立たない、個人的で身勝手な没頭であることがほとんどです。

会社に「自己実現」という立派なパッケージを求めるから苦しくなるのです。あなたが本当にやりたい事は、もっと泥臭くて、個人的で、すでにあなたの日常や過去の中に隠れています。

【アクションプラン】自分の「攻略本」を見つけよう

あなたが子どもの頃や学生時代、あるいは今現在、「お金にならなくても、誰に褒められなくても、つい時間を忘れてやってしまうこと」は何ですか?

  • 複雑なデータを、エクセルで綺麗に整理整頓することでしょうか?
  • 旅行の計画を分単位でシミュレーションすることでしょうか?
  • 他人が見落としているルールの抜け穴を探すことでしょうか?

今週末は、ぜひこの「役に立たないけれど、息を吸うようにやってしまうこと」を1つでいいので書き出してみてください。それが、会社に依存せずに、あなた自身が人生の主導権を取り戻すための「最強の武器」の種になるはずです。

人生の棚卸し:その自己実現、本当に今の会社でしかできない?

さて、ここまで「社会的に立派なこと」という就活の呪縛を捨て、自分だけの「無意識の没頭(役に立たないかもしれないけれど、好きなこと)」を見つけるヒントをお伝えしました。

ここで、いよいよ最後の、そして最も重要な問いを投げかけたいと思います。

あなたが本当にやりたいその「自己実現」は、本当に今の会社に勤めていなければできないことでしょうか?

会社が押し付ける「3点セット」の罠

多くの日本人は、「収入」「社会的地位」「やりがい(自己実現)」の3つを、すべて1つの会社から得ようとしてしまいます。いわば、会社が提供する「人生のお得な3点セット」を買わされている状態です。

しかし、このセット商品は非常に厄介です。なぜなら、1つでも不満(例えば「やりがいがない」「人間関係が最悪だ」)があると、人生全体の満足度が一気に下がってしまうからです。

本当に賢い生存戦略は、この3点セットを「アンバンドル(分解)」することです。以下の表を見てみてください。

人生の要素依存先(どこから得るか)目的・割り切り方
① 最低限の収入今の会社(労働力の提供)「生活費を稼ぐためのATM」と割り切る。過剰な忠誠心は払わない。
② 社会的地位執着しない(捨てる)「大企業の〇〇さん」という肩書きは、会社の外では役に立たないと知る。
③ やりがい(自己実現)個人の活動(副業、趣味、法人)誰の許可も得ず、自分の「無意識の没頭」を100%コントロールする。

自己実現は「会社の外」で小さく育てればいい

私自身、かつては組織のルールの中で働くエンジニアでした。しかし、会社の中で自分の思い通りに「攻略(自己実現)」を進めることの限界と息苦しさを感じ、最終的にマイクロ法人という自分だけの小さな箱を作りました。

大企業の看板はなくなりましたが、誰に忖度することもなく、自分の頭で考え、資本主義のルールをハックするという「本当にやりたい事」に没頭できています。そして何より、組織の都合に振り回されず、自分の人生の主導権を完全に握っているという穏やかな安心感があります。

現代は、個人が発信し、繋がり、ビジネスを作ることがかつてないほど容易な時代です。
会社の中で、上司の顔色を伺い、何年も希望の部署に行けるのを待つ必要などありません。あなたの「やりたい事」は、今日の仕事終わりに、自宅のPCやスマホから、たった1人で小さく始めることができるのです。

【アクションプラン】会社と自分との間に「境界線」を引く

この記事を最後まで読んでくださったあなたに、今日からできる最後のアクションプランを提案します。
それは、明日から会社に行く時、「私は今日、自己実現のためではなく、労働力を提供して現金を得るためにここに来ている」と心の中で宣言することです。

  1. 会社への過剰な期待(やりがい、正当な評価、希望の配属)を捨てる
  2. 浮いたエネルギーと時間を使って、会社の外で「自分の攻略本」を作る

会社は自己実現の場ではありません。あなたの人生を豊かにするための、ただの「インフラ」です。まずは今週末、自分の過去の「無意識の没頭」の棚卸しから始めてみませんか。あなたがあなただけの「ゲーム」を見つけ、自由にプレイし始めることを、心から応援しています。

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