あなたの資産運用、「目隠しダイエット」になっていませんか?政府の失敗から学ぶPL/BS管理の鉄則

哲学

体重計に乗らずにダイエットはできない。では、お金は?

「今年こそはお金をしっかり貯めよう」
「将来の不安をなくすために、資産運用を頑張ろう」

そう決意して、日々の節約を意識し始めたり、話題のNISA口座を開設してみたという方も多いのではないでしょうか。
(参考記事:「NISAはオルカンだけでいい?」と思った人へ。

まずは第一歩を踏み出したこと、本当に素晴らしいことだと思います。でも、ここで一つだけ、ご自身に問いかけてみてください。

「あなたは今、自分の『全資産』と『毎月の正確な収支』をパッと答えられますか?」

もし、少し口ごもってしまったとしたら……少しだけ立ち止まって考えてみませんか?
なぜならそれは、「一度も体重計に乗らず、自分が1日に何キロカロリー食べているかも知らないまま、目隠しでダイエットをしている状態」と全く同じだからです。

お金とダイエットの共通点を、簡単な表で比較してみましょう。

項目ダイエットの場合資産運用(お金)の場合
最終目標理想の体重・体型になる資産を増やし、経済的なゆとりを得る
現状の把握
(BS:貸借対照表)
現在の体重・体脂肪率を体重計で正確に測る現在の総資産・負債(借金)を正確に把握する
日々の行動
(PL:損益計算書)
摂取・消費カロリーを日々記録する毎月の収入と支出を日々記録する
失敗する原因体重計に乗るのが怖くて現実から目を背ける口座残高やクレカの額を見るのが面倒・怖い

「今月は少し使いすぎたかもしれない…」「クレジットカードの引き落とし額を見るのが怖い…」と、口座残高から目を背けたくなるお気持ちは、痛いほどよくわかります。現実の数字を直視するのは、誰だって少し勇気がいるものです。

私自身、日々の学習や事業運営を通じて数字と向き合っていますが、個人の家計管理に難しい専門知識は必要ありません。「まずは目隠しを外して、恐れずに現在の自分のお金(体重)を測る」こと。これがすべてのスタートラインになります。

「でも、ついつい感覚でどんぶり勘定になってしまう……」
そう落ち込む必要はありません。実は、この「現状の数値を直視せずに、感情でなんとなく運用してしまう」という失敗は、日本のエリート官僚たちが集まる政府の巨大プロジェクトでも起きていたのです。

なぜ優秀な官僚たちは何百億もの赤字を出したのか?

数字を見るのが怖いという心理は、私たち一般人だけの話ではありません。日本のトップエリートである官僚たちでさえ、この罠に見事にハマってしまいました。

その代表例が、最近ニュースでも統廃合が議論されている政府の官民ファンド「クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)」です。
(参考ソース:経済産業省「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)について」

優秀な頭脳が集まっているはずなのに、なぜ540億円(2026年3月期決算時点)もの累積赤字を出してしまったのでしょうか?

その最大の理由は、「客観的な数字(BS/PL)」での評価を、「エモーショナル(感情的)な言い訳」ですり替えてしまったからです。

本来、このファンドは「投資」の財布からお金が出ているため、「損益計算書(PL)で利益を出し、貸借対照表(BS)で資産を増やすこと」が絶対のルールでした。
しかし、実際の運用現場ではこうなってしまいました。

評価のポイント民間の投資ファンド過去の官民ファンド(クールジャパン等)
赤字が続いた時即座に損切り(撤退)する日本のブランド向上に貢献している!」と言い訳して継続
評価の基準冷酷な「数字(BS/PL)」エモーショナルな「感情・定性評価」

「日本のブランド力向上」という言葉は、素晴らしい理念に聞こえます。しかし、投資の世界において「理念」で赤字を覆い隠すのは、まさに「体重計に乗らない目隠しダイエット」の極みです。

私たち個人も、同じ罠に陥ることがあります。
「株価は下がって赤字だけど、この企業を応援したいから……」
「家計は毎月赤字だけど、これは将来への投資だから……」

応援する気持ちや将来を想う気持ちは素晴らしいものです。しかし、「資産を増やす」という目的にフォーカスするのであれば、感情と数字は完全に切り離して考えなければなりません。

2018年の教訓:エモい言い訳を排除し、BS/PL管理へ

「やっぱりお役所仕事はダメだなぁ」と思ってしまうかもしれませんが、実は政府も、ただ赤字を放置していたわけではありません。

2018年、別の官民ファンド(A-FIVE)が大失敗したことを重く見た政府は、全官民ファンドに対して「『政策の意義』といったエモい言い訳を禁止し、徹底的にBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)の数字で管理する」という厳しいルールを義務付けました。
(参考ソース:内閣官房「官民ファンドの運営に係るガイドライン」

現在ニュースになっているクールジャパン機構の廃止議論も、「なんとなくダメそうだから」ではなく、「期限までに赤字を減らすという数字の目標に届かなかったから、ルール通りに廃止・統合手続きを進める」という、極めてドライで会計的な手続きが進んでいるだけなのです。

感情を排除し、冷徹に「BSとPLの数字」を見る仕組みを作ったからこそ、国は無尽蔵にお金が溶けていく事態にブレーキをかけることができました。

私たちの家計にも「改革」を起こそう

ここから私たちが学べるのは、「人間の意志や感情は弱い。だからこそ、数字で客観的に判断する『仕組み』に頼るべきだ」ということです。

「ついつい無駄遣いしてしまう自分」を責める必要はまったくありません。私たちがやるべきことは、気合いで節約することではなく、家計の「損益計算書(PL:毎月の収支)」と「貸借対照表(BS:現在の資産と負債)」を常に可視化する仕組みを作ることです。

個人が確実に資産を増やすための「決算(可視化)」のやり方

「PLとかBSとか、なんだか難しそう……」
そう身構えなくても大丈夫です。簿記の勉強をしている私から見ても、個人の家計管理に複雑な会計知識は一切不要です。

まずは、以下の2つの数字の違いだけを知っておきましょう。

PL(損益計算書)
=「今月の成績表」
BS(貸借対照表)
=「現在の健康診断書」
何がわかる?1ヶ月で、いくらお金が残ったか?今、本当の資産がいくらあるか?
一番見るべき数字利益(収入 - 支出)純資産(資産 - 負債)

① 個人のPL(損益計算書)
いわゆる「毎月の家計簿」です。今月の収入から支出を引き、いくら手元に残ったか(利益)を把握します。

② 個人のBS(貸借対照表)
「財産の総額」です。貯金や株(資産)から、ローンなどの借金(負債)を引いた「純資産」がいくらあるかを見ます。ここが右肩上がりに増えているかを確認することが、資産運用の最大の目的です。

手書きやエクセルの家計簿はおすすめしません

「概念はわかったから、今日からノートに家計簿をつけよう!」
その意気込みは素晴らしいのですが、実は手作業での管理はおすすめしません。なぜなら、手作業には必ず「人間の感情」が入り込むからです。

「今月は赤字だけど、たまたま出費が重なっただけだから見なかったことにしよう」
これこそが、優秀な官僚たちが陥った「エモい言い訳」の始まりです。

私たちがやるべき決算とは、ノートを開くことではなく、「感情を持たないシステムに、正確な現在地を突きつけてもらうこと」なのです。

私は「マネーフォワードME」でこうやって資産を管理している

手作業の家計簿で言い訳をしてしまうなら、どうすればいいのか。
結論から言うと、「日々の支払いをキャッシュレスにして、家計簿アプリに自動連係させる」こと。これが最強の解決策です。

私は、連携できる金融機関が圧倒的に多い「マネーフォワード ME」を愛用しています。具体的なやり方は、たったの3ステップです。

  1. 日々の支払いを「100%キャッシュレス」にする
    現金を使うのを極力やめ、日用品の買い物やカフェ代も、すべてApple Pay(またはGoogle Pay)やクレジットカードで済ませます。
  2. マネーフォワードMEにすべて連携する
    お使いのクレジットカード、銀行口座、NISAの証券口座などをすべてアプリに紐付けます。最初だけ少し時間がかかりますが、ここを乗り越えれば一生「全自動」です。
  3. 毎日「体重計に乗る」ようにアプリを開く
    あとは毎日1回、スマホを開くだけ。Apple Payでピッと支払ったコーヒー代も自動で「今月の支出(PL)」として集計され、株価の変動も反映された「現在の純資産(BS)」が美しいグラフで表示されます。

毎日のこの作業は、まさに「毎日、お風呂上がりに体重計に乗る」のと同じ感覚です。
システムが勝手に集計してくれるので、エモーショナルな言い訳を挟むことなく、冷静に数字に基づいた判断ができるようになります。

まとめ:政府より賢く、冷静に自分の資産を育てていくために

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

エリート官僚たちでさえ、美しい言い訳に逃げて巨額の資産を溶かしてしまいました。私たち個人が「ついつい自分に都合の良い言い訳をしてしまう」のも、無理のないことなのです。

だからこそ、「人間の意志の弱さ」を補うためのシステムを活用しましょう。

日々の支払いをキャッシュレスにし、マネーフォワードMEなどのアプリに連携する。そして、毎日体重計に乗るように自分の「PL(収支)」と「BS(純資産)」を直視する。

数字は決してあなたを責めるものではありません。目的地へ導いてくれる頼もしい羅針盤です。
自動化によってお金の管理ストレスから解放されれば、浮いた時間を有意義に使えます。健康を整えるための運動やリフレッシュ、新しい知識のインプット、そして大切な人たちとの穏やかな時間。人生を本当に豊かにするものへ、時間を「投資」できるようになります。

政府の過去の失敗を反面教師にして、私たちはもっと賢く、もっと冷静に、自分の資産を育てていきましょう。

まずは今日、スマホにアプリをダウンロードし、一番よく使うクレジットカードを1枚だけ連携することから始めてみませんか?
目隠しを外して「自分の現在地」を知ったその瞬間から、あなたの本当の資産形成がスタートします。

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