はじめに:マイクロ法人の経理は「型」を作れば怖くない!
こんにちは。アーリーリタイア後の生活基盤としてマイクロ法人(資産管理会社)を設立し、Webメディア運営と外国株式(主にVYM)やJ-REITでの資産運用を2本柱として活動しています。
法人の確定申告や決算整理の時期になると、毎年のこととはいえ少し身構えてしまいますよね。現在、税理士を目指して日商簿記1級の過去問と格闘している身としても、自社の帳簿は1円のズレもなく完璧に仕上げておきたいところです。
今回は、マイクロ法人を運営する上で多くの方が壁にぶつかる「個人のクレジットカードでの立替」「米国ETFや国内配当金の仕訳」「決算時の役員報酬や税金の処理」、そして少し専門的な「有価証券の期末評価(税効果会計)」について、私の実際の仕訳を包み隠さず公開します。
一度「型」を作ってしまえば、あとはパズルを当てはめるだけ。自力での申告作業がグッと楽になりますよ!

マイクロ法人の「あるある」なお悩みと期中仕訳
まずは、毎月発生するルーティンや、法人設立直後に必ず悩む「個人の財布と法人の財布の混同」に関する仕訳です。
個人のクレジットカードで経費を立て替えた時
Webメディア運営にかかるサーバー代やAIツールの利用料などを、社長個人のクレジットカードで決済することはよくありますよね。
本来は「役員借入金」という科目を使いますが、利用している申告・会計ソフト(全力法人税など)に専用科目が用意されていないことがあります。その場合は、1年以内に精算(会社から個人へお金を戻す)する前提で、「短期借入金」として処理して全く問題ありません。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 〇〇〇 | 短期借入金 | 〇〇〇 |
※「未払金」という科目を使ってもOKです。ご自身が管理しやすい方を選びましょう。

毎月の役員報酬(月額45,000円)の支払い
当法人は「月末締め・翌月月末払い」で役員報酬を支給しています。
給与の仕訳は、借方(左側)に「額面(総支給額)」をドンと書き、貸方(右側)で「手取り」と「天引き」に分けると、給与計算の仕組みがスッキリと理解できます。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 役員報酬 | 45,000 | 普通預金 | 33,601 |
| 預り金 | 11,399 |
💡 仕訳のポイント解説
- 役員報酬(45,000円): 会社が経費として落とす、役員報酬の「額面」です。
- 普通預金(33,601円): 実際に社長個人の口座へ振り込まれる「手取り額」です。
- 預り金(11,399円): 個人が負担する社会保険料分です。会社が給与から天引きして、後で代わりに年金事務所へ納付するため「一時的に預かっているお金」として処理します。

社会保険料の支払い
月末に、会社が負担する分(法定福利費)と、先ほど役員報酬から天引きした個人負担分(預り金)を合算して、年金事務所へ支払います。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法定福利費 | 11,737 | 普通預金 | 23,136 |
| 預り金 | 11,399 |
🔗参考情報:日本年金機構(厚生年金保険料額表)

資産運用のキモ!配当金の仕訳(米国株 vs 国内株)
当法人のもう一つの収益の柱である、資産運用に関する仕訳です。
実は、米国株(VYMなど)と国内株(J-REITなど)では、税金の引かれ方が違うため、仕訳の形も変える必要があります。

米国株式(VYM)分配金の受け取り
VYMの分配金からは、「アメリカの税金(外国源泉税:10%)」と「日本の税金(国内源泉税:15.315%)」の2つの税金が引かれています。
ここでの最大のコツは、受け取った時点で2つの税金を別々の科目で仕訳しておくことです。これをやっておくだけで、面倒な決算整理が圧倒的に楽になります!
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 〇〇〇(手取り額) | 受取配当金 | 〇〇〇(税引前総額) |
| 租税公課 | 〇〇〇(外国税10%) | ||
| 仮払法人税等 | 〇〇〇(国内税15.315%) |
💡 なぜ科目を分けるの?
- 租税公課: アメリカの税金は、会社の経費(損金)にして法人の利益を圧縮するために使います。
- 仮払法人税等: 日本の税金は、法人が赤字(または利益が少ない)の場合、後で国から全額還付されるため「前払いした税金(資産)」として扱います。

国内株式やJ-REITの配当金の受け取り
一方、国内株式やJ-REITの配当金はとてもシンプルです。外国税が存在しないため、引かれているのは日本の税金(15.315%)だけです。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 〇〇〇(手取り額) | 受取配当金 | 〇〇〇(税引前総額) |
| 仮払法人税等 | 〇〇〇(国内税15.315%) |
🔗参考情報:国税庁(配当金を受け取ったとき)

決算整理仕訳:ここを乗り切ればゴールです!
いよいよ決算整理です。期中の仕訳を先ほどの「型」通りに正しく行っていれば、ここはパズルの最後のピースをはめるように美しく処理できます。
VYM・REITの国内税を「未収還付法人税等」へ振替
当法人のように、メディア事業が先行投資の段階で法人の事業所得が赤字(または少額)の場合、法人税額は0円になります。そのため、期中に「仮払法人税等」として前払いしていた国内税は、全額手元に還付(キャッシュバック)されます。
「後で国から返してもらう権利」として、期末に資産の科目へ振り替えます。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収還付法人税等 | 〇〇〇(年間の合計額) | 仮払法人税等 | 〇〇〇(年間の合計額) |

赤字でも絶対にかかる!「均等割(県民税・市民税)」の未払計上
マイクロ法人を設立して一番驚くのがこれかもしれません。法人はたとえ赤字であっても、地方税(県民税・市民税)の「均等割」として年間約7万円の税金が絶対にかかります。
この税金は決算日から2ヶ月以内に支払うため、決算時点ではまだ払っていません。しかし「当期にかかった税金」としてしっかり経費に入れるため、期末に以下の未払計上の仕訳を行います。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 70,000 | 未払法人税等 | 70,000 |

決算月(4月)の役員報酬と社会保険料の未払計上
ここも意外と忘れがちなので注意が必要です。
当法人の役員報酬は「翌月月末払い」です。つまり、決算月である4月分の労働に対する報酬と社会保険料は、4月末時点では口座から引き落とされていない「未払い」の状態ですよね。
これを当期の経費としてキッチリ落とすための、非常に大切な仕訳です。
【役員報酬の未払計上】
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 役員報酬 | 45,000 | 未払費用 | 33,601 |
| 預り金 | 11,399 |
【社会保険料の未払計上】
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法定福利費 | 11,737 | 未払費用 | 23,136 |
| 預り金 | 11,399 |
⚠️ ご自身の法人の「支払いルール」を確認しよう!
もし、役員報酬を「当月払い(4月分を4月中に払う)」に設定している法人の場合は、決算月に役員報酬の未払いは発生しません。その場合は「役員報酬の未払計上」の仕訳は不要になります(社会保険料の未払計上のみ必要です)。ご自身の会社のルールに合わせて調整してくださいね。

資産運用の総仕上げ!VYM・REITの期末評価(税効果会計)
当法人のようにVYMやJ-REITなどで資産運用をしている場合、決算日の株価(時価)に合わせて帳簿の価格を修正する「時価評価」を行う必要があります。これらの銘柄は、会計上は「その他有価証券」というグループに分類されます。
ここでポイントになるのが、含み益や含み損が出たときの処理です。「まだ売っていない(利益が確定していない)のに、税金がかかるの?」と不安になりますよね。結論から言うと、売るまでは税金はかかりません。

そこで、将来の税金への影響を帳簿にメモしておく「税効果会計」というテクニックを使います。専門用語が並んで難しく感じるかもしれませんが、実務では以下の「型」に当てはめるだけでOKです!
※わかりやすく、実効税率を30%として計算した場合の仕訳例です。
【パターンA:期末に「10万円の含み益」が出ている場合】
決算日に保有している有価証券全体の価値が、買った時よりも100,000円値上がりしていた時の仕訳です。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 100,000 | その他有価証券評価差額金 | 70,000 |
| 繰延税金負債 | 30,000 |

【パターンB:期末に「10万円の含み損」が出ている場合】
逆に、決算日に保有している有価証券全体の価値が、買った時よりも100,000円値下がりしていた時の仕訳です。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 70,000 | 投資有価証券 | 100,000 |
| 繰延税金資産 | 30,000 |
💡 仕訳のポイント解説
- 投資有価証券: 実際の値上がり・値下がりした金額(100,000円)を記載し、帳簿の価値を現在の株価に合わせます。
- 繰延税金負債 / 繰延税金資産: 評価額に税率(30%)を掛けた金額(30,000円)を計上します。将来売ったときに増減する税金分のメモです。
- その他有価証券評価差額金: 評価額から税金分を差し引いた、純粋な価値の変動分(70,000円)です。これは「純資産」のグループに入るため、当期の会社の利益(損益)には一切影響しません。
⚠️超重要:翌期首の「洗替(あらいがえ)」を忘れずに!
この仕訳はあくまで「決算日だけの仮の姿」です。新しい年度(翌期首)がスタートしたら、借方と貸方をひっくり返した逆の仕訳を入力して、帳簿を元の買った値段(原価)に戻す処理を必ずセットで行いましょう。

わからないことは税務署に聞くのが一番の近道!
ここまで色々な仕訳を解説してきましたが、法人化すると「すべて自分一人で完璧にこなさなければいけないのでは」と思い詰めてしまうこともありますよね。
でも安心してください。どうしてもわからないことがあれば、管轄の税務署に聞いてみるのが一番確実で安心です。
実は私自身も、法人の最初の決算のとき、VYMなどの分配金から引かれた税金がどうやって還付されるのか(未収還付法人税等への付け替えの仕組み)が全く理解できず、途方に暮れていました。
そこで思い切って税務署に相談へ直接行ったところ、担当の方が図解しながら、仕組みや仕訳から申告の書き方まで本当に丁寧に教えてくれたんです!
確定申告の繁忙期(2月中旬〜3月頃)を避けて訪問すれば、基本的にはゆっくり時間を取って親切に対応してもらえます。「自力で正しく経理を頑張りたい」という姿勢を見せれば、彼らもとても心強い味方になってくれますよ。

おわりに
いかがでしたでしょうか。
一見すると複雑に見える米国ETFとJ-REITの税金処理の違いや、均等割・未払費用の計上、そして税効果会計を用いた有価証券の評価も、こうして分解して
「聴くブログ」としても配信中
この記事の内容は、YouTubeチャンネルでも音声解説として公開しています。ブログでは書ききれなかった裏話や、私自身の率直な所感も交えてお話ししています。ラジオ感覚でぜひお楽しみください。


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